それまではどこの家でも、カマドでご飯を炊いていた。暮らしの基本は戦後十年以上を経ていても江戸時代と変わっていないような状態だった。
そういう意味では、電気釜の発明は画期的に人々の生活を変えたといっても過言ではない。
台所は土間にあり、そこにカマドがしつらえてあった。
早朝、朝食の支度をする母親のそばで、カマドの火をじっと見つめていて飽きなかった。
ご飯が炊き上がると、必ずできるおこげで母親はおむすびを作ってくれた。それが欲しくて早朝の台所にいたのかとも思う。炊き上がって蓋を取ったときの湯気とあの香りは、まさに至福の時だった。
やがて電気釜がカマドを駆逐し、土間もダイニングキッチンになった。電気釜でも炊きたての香りはあるが、やはりカマドの薪で炊き上げたものとは違う。
土間では賑やかに年末の餅つきを連想する。いまは土間もなく前庭で餅つきをするらしく、餅がご馳走という観念もほとんど無いとか。今年も後一日…。

